就職のために危険物取扱者を取ろうと思ったけど、「乙種」と「甲種」どっちがいいかな?
会社で「乙4」を取るように言われたけど、「甲種」に挑戦できるならしてみたい!
一定量以上の引火性液体を取り扱う施設や貯蔵所で必要となる「危険物取扱者」の資格。
この危険物取扱者には、「甲種」「乙種」「丙種」の3種類があります。
ほかの資格ではなかなか聞かない分類なので、何が違うのか戸惑う方も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、以下のことについて解説します。
- 「甲種」「乙種」の違い
- 「甲種」の受験資格について
- 試験難易度の違い
この記事を読んで、「よし!甲種を受験してみよう!」あるいは「試験日まで時間がなさそうだから今回は乙種にしておこうかな」と選択するための材料になれば幸いです。
- 大学生のときに危険物取扱者乙種第4類に合格(得点率89%)
- 社会人のときに危険物取扱者甲種に合格(得点率95%)
- 理系大学出身
- 趣味は資格の取得
- 公害防止管理者水質第1種や統計検定2級、漢検準1級などを取得しています
「甲種」と「乙種」ってなにが違うの?
取り扱える危険物の範囲が違う
主な違いは、取り扱える危険物の範囲です。
危険物は化学物質の性質によって、第1類から第6類に分かれています。
危険物の分類 | 性質 | 危険物の例 |
---|---|---|
第1類 | 酸化性固体 | 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類等 |
第2類 | 可燃性固体 | 硫化リン、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム等 |
第3類 | 自然発火性物質及び禁水性物質 | カリウム、アルキルアルミニウム、黄りん等 |
第4類 | 引火性液体 | ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類等 |
第5類 | 自己反応性物質 | 有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物等 |
第6類 | 酸化性液体 | 過塩素酸、過酸化水素、硝酸等 |
「乙種」では、この第1類から第6類から受験する科目を選びます。
たとえば「第4類」に合格すると、「乙種第4類危険物取扱者」の免状がもらえます。
「甲種」では、すべての類の危険物について、取り扱えるようになります。
扱える危険物の種類:甲種>乙種>丙種
危険物保安監督者になるための要件が違う
「甲種」免状取得者は、どれか1つの類で実務経験が6か月以上あれば、すべての類について危険物保安監督者になることができます。
「乙種」免状取得者は、免状を持っている類での危険物保安監督者にしかなれません。(6か月の実務経験があれば保安監督者になれる点は同じです。)
また、複数の「乙種」免状を取得している場合、それぞれの類で6か月以上の実務経験が求められる点が、「甲種」との違いです。
危険物保安監督者
取り扱う施設の種類や、取り扱う危険物の量によって、置かなければならないと消防法で決められている。
「甲種」または「乙種」危険物取扱者のうち、6か月以上実務経験がある人から選任される。
「甲種」の受験資格について
危険物取扱者試験は、「乙種」と「丙種」については受験資格がありませんが、「甲種」については受験資格があります。
実務経験がない場合の要件としては、主に理系大学出身であることが求められます。
- 大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者
- 卒業証明書又は卒業証書(学科等の名称が明記されているもの)
- 大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
- 単位修得証明書又は成績証明書(修得単位が明記されているもの)
- 乙種危険物取扱者免状を有する者(実務経験2年以上)
- 乙種危険物取扱者免状及び乙種危険物取扱実務経験証明書
- 乙種危険物取扱者免状を有する者(次のa.~d.の4種類を持っている必要があります)
a. 第1類または第6類
b. 第2類または第4類
c. 第3類
d. 第5類- 乙種危険物取扱者免状
- 修士・博士の学位を有する者
- 学位記等(専攻等の名称が明記されているもの)
1.~6.のうちのいずれかを満たしている必要があります。
細かい受験資格については、一般社団法人消防試験研究センターのHPで必ず確認してください。
また資格証明書は、受験願書と一緒に書面で郵送する必要があります。(一部例外を除く)
そのため、ゆとりをもって書類の準備をしましょう。
試験難易度の違い
合格率
令和4年度の合格率は、以下の通りです。
甲種 | 乙1 | 乙2 | 乙3 | 乙4 | 乙5 | 乙6 | 乙種全体 | 丙種 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
合格率(%) | 37.3 | 69.1 | 68.6 | 70.6 | 31.5 | 70.4 | 69.3 | 39.3 | 52.0 |
「甲種」が合格率37.3%と4割切っているのに対して、「乙種」は7割前後となっています。
(「乙4」については、有名資格ということもあり受験者数が多く、またその中で記念受験者も多いと考えられるので、合格率が下がっています。)
甲種と乙種では、合格率が2倍も違う、、
たしかに合格率に差はありますが、甲種についても勉強すれば受からない試験ではありませんよ。
勉強時間
「乙種」については1週間~1か月程度、「甲種」については1か月~3か月程度かかるとみておきましょう。
筆者が考える「甲種」「乙種」のおすすめは?
結論から言うと、「甲種」の受験をおすすめします!
理由① 3科目中2科目については勉強する労力が変わらない
ここで、「甲種」と「乙種」の試験科目を確認しましょう。
科目 | 問題数 |
---|---|
危険物に関する法令 | 15 |
基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 10 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10 |
試験科目の構成は「甲種」と「乙種」で変わりません。
「甲種」と「乙種」の大きな違いは、「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」の試験内容だけです。
「乙種」では、受ける類の危険物から重点的に出題されるのに対して、「甲種」では、すべての危険物からまんべんなく出題されます。
危険物に関する法令
勉強内容は「乙種」でも「甲種」でも変わりません。
(基礎的な)物理学及び化学
主に高校化学の範囲を理解している必要があります。
「甲種」の方が多少問題が難しくなりますが、勉強する範囲は変わらないので、「(基礎的な)物理学及び化学」についても、勉強量はほとんど変わらないと言っていいでしょう。
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法
「甲種」では第1類から第6類のすべての危険物から出題されます。
「乙種」の場合は、受ける類の危険物から重点的に出題されますが、ほかの「乙種」の概要についても出題されます。
「乙種」の「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」で出題される10問のうち、1~2問は危険物全体の知識を問われる問題が出題されます。
どちらにせよすべての危険物について勉強する必要があるので、はじめから「甲種」を受験するのもおすすめです。
理由② 範囲が広い分、細かいことは覚えなくてもいい
「乙種」では、受験する類の危険物の性質についてかなり細かく覚える必要があります。
「甲種」では取り扱う危険物が広い分、「乙種」ほど細かく覚える必要がありません。
例えば私は「乙4」を受験してから「甲種」を受験しました。
乙4ではガソリンや軽油、灯油などの引火点、沸点を覚えなくてはならず、かなり苦労した記憶がありました。
そのため甲種受験の際には「乙4の6倍の暗記量か、、」とかなり身構えたのですが、「甲種」ではそこまで細かいところを覚える必要がなく、拍子抜けしました。
私のように細かい数字を覚えるのが苦手、、と言った方は「甲種」受験をおすすめします。
理由③ 「乙種」を取っていても「甲種」で科目免除をしてくれない
「乙種」と「甲種」では、共通している試験科目もあります。
しかし乙種を合格していても、甲種受験の際に試験科目の免除はありません。
乙種取ってから甲種を取ろうかな、と考えている方は、試験を純粋に2回受けることになります。
特に乙種と甲種の受験間隔が空くと、勉強時間も純粋に伸びますので、はじめから「甲種」を狙うのがおすすめです。
以上が、私が理系大学出身に「乙種」ではなく「甲種」をおすすめする理由です。
せっかく甲種受験を考えたならば、少し勉強時間は伸びますが、甲種受験をおすすめします!
甲種については、以下の記事で勉強方法を紹介していますので、参考にしてください。
まとめ
この記事では、以下のことを解説しました。
- 「甲種」「乙種」の違い
- 取扱える危険物の範囲の違い
- 危険物保安監督者の違い
- 「甲種」の受験資格について
- 理系大学出身であることが求められる
- 文系大学出身の場合は乙種を複数持つことが必要
- 試験難易度の違い
- 合格率は「甲種」が「乙種」の約半分
- 勉強時間は「甲種」が「乙種」の約3倍
個人的には、「甲種」の受験をおすすめしています。
この記事が少しでもみなさんの参考になれば幸いです。