熱は移動するので、外部から熱を与えれば物体を温めることができます。
水100gと鉄100gを火にかけたとき、早く熱くなるのはどちらでしょう。
では水100gと鉄500gだったら?
今回は、物体の温めるために必要な熱量について学習しましょう。
- 熱量は熱を量で表したものであり、単位にはJ(ジュール)を使う
- 物質の温めるのに必要な熱量は、比熱と物質の量と上昇させる温度のかけ算で求められる
①熱量は熱を量で表したものであり、単位にはJ(ジュール)を使う
同じ大きさのコップに、20℃の水と100℃のお湯が入っていたとして、どちらの方が熱量が大きそうですか?
なんとなく100℃の水の方が熱量が大きそうですね。
熱は量として扱うことができ、これを熱量と言います。
熱はエネルギーなので、熱量の単位にはJ(ジュール)を用います。
熱量は文字通り熱の量と言う意味ですが、危険物取扱者試験では「ある物質を温めるのに必要な熱量はいくらか?」のように聞かれます。
そこで次からは物質を温めるのに必要な熱量について考えていきます。
②物質の温めるのに必要な熱量は、比熱と物質の量と上昇させる温度のかけ算で求められる
物質を温めるのに必要な熱量を求めるためには、3つのことを考える必要があります。
まず1つめが、物質の量です。
水100gと水50gだと、水100gの方が温めるのに熱量が必要になるでしょう。
このように物質を温めるのに必要な熱量は、物質の量を考える必要があります。
2つめは、上昇させる温度です。
水を10℃から80℃に上昇させるのと、10℃から100℃に上昇させるのだと、10℃から100℃に上昇させる方が熱量が必要になるでしょう。
このように物質を温めるのに必要な熱量は、上昇させる温度がどれくらいか、ということも考える必要があります。
最後3つめは、物質の種類です。
水と鉄だと、鉄はすぐに温まり、水はなかなか温まりにくいため、水の方が温めるのに熱量がより必要になるでしょう。
物質1gを1℃上昇させるのに必要な熱量は物質ごとに違い、これを比熱と言います。
以上3つの要素を使って、熱量は以下の式で求めることができます。
たとえば、水100gを20℃から100℃に上昇させるのに必要な熱量は、式にあてはめて以下のように求めることができます。
熱量[J]=4.2[J/℃・g]×100[g]×(100[℃]-20[℃])
=4.2[J/℃・g]×100[g]×80[℃]
=33,600(=33.6[kJ])
また、30℃の鉄10gに264Jの熱量を与えたら、鉄の温度は何℃になるかを考えるのであれば、以下のように求めることができます。
(求める温度をT[℃]と置きます。)
264[J]=0.44[J/℃・g]×10[g]×(T[℃]-30[℃])
264/0.44×10=T-30
60 =T-30
T=60+30
=90
③熱容量はある物体の温度を1K上昇させるのに必要な熱量のこと
比熱と熱容量の定義を比較してみましょう。
比熱 :物質1gを1K上昇させるのに必要な熱量
熱容量:物体 を1K上昇させるのに必要な熱量
あまり差がありませんね。
例えば、水100gを20℃から100℃に上昇させるのに必要な熱量は、33.6kJと求められました。
しかし、実際に鍋で水を沸かすことを考えると、33.6kJの熱量を与えても、水は沸かないでしょう。
これは鍋の温度上昇に熱量が奪われるからです。
水と鍋、これを1つの物体として考えたときの温度上昇の概念が熱容量であると考えることができます。
熱容量と比熱には以下の式の関係があります。
熱容量[J/K]=物体の質量[g]×比熱[J/K・g]
確認テスト
ある液体200gを10℃から40℃まで上昇させるのに必要な熱量として、次のうち正しいものはどれか。
ただし、この液体の比熱は1.3[J/K・g]とする。
(1)2600J (2)7800J (3)10400J (4)73580J (5)81380J
【Kを℃に読み替えた場合】
(2)熱量[J]=1.3[J/K・g]×200[g]×(10[℃]-40[℃])
=1.3[J/K・g]×200[g]×30[℃]
=7800(=33.6[kJ])
【℃をKに直してから計算した場合】
10℃=283K、40℃=303Kなので、
(2)熱量[J]=1.3[J/K・g]×200[g]×(313[K]-283[K])
=1.3[J/K・g]×200[g]×30[K]
=7800(=33.6[kJ])
危険物取扱者試験ではこのように、上昇させる温度の差を計算に使うので、℃でもKでも計算結果が変わりません。